品質月間に思う:企業理念との関連性

みなさん知っていますか? 11月は品質月間です。特定の企業に所属していない方や、これから創業しようとしている方にはピンとこないでしょうが、日本のメーカーではこの月間に合わせて様々な社内イベントを行い、品質に関する認識を新たにします。そこで、11月は数回にわたって、日本の品質すなわち日本特有と思われる品質に関して、私の思いを発信させていただきます。

まず初回は、品質と企業理念の関連性です。品質問題事故を起こす企業って、何度も繰り返すと思ったことはありませんか? 品質問題が発生するということは、少なからず企業風土とか、職場環境すなわち根本となる企業理念が影響を及ぼしているのではと考え、メーカー別の企業理念を比較してみたことがあります。そう、決定的な差があるのではと予想したんですけど。結果は全く逆で、企業理念はほとんど同じことを語っていました。すなわち、
  (1).仲間を尊重すること
  (2).誠実に仕事をすること
  (3).技術革新を追求すること
もちろん表現に若干の違いはありますが、この3点に集約されます。あるいは、少なくともこの3点は必ず含まれます。何点か紹介しましょう(順不同)。

日立グループ創業の精神
  和:他人の意見を尊重しつつ、偏らないオープンな議論をし、一旦決断に至れば、
    共通の目標に向かって全員一致協力すること。
  誠:他者に責任を転嫁せず、常に当事者意識を持って誠実にことに当たること。
    社会から信頼を得るための基本姿勢。
  開拓者精神:未知の領域に、独創的に取り組もうとすること。常に専門分野で先駆者で
    ありたいと願い、能力を超えるような高いレベルの目標に挑戦する意欲のこと。

豊田綱領
  一、上下一致、至誠業務に服し、産業報国の実を挙ぐべし。
  一、研究と創造に心を致し、常に時流に先んずべし。
  一、華美を戒め、質実剛健たるべし。
  一、温情友愛の精神を発揮し、家庭的美風を作興すべし。
  一、神仏を尊崇し、報恩感謝の生活を為すべし。

東芝グループ理念体系(私たちの価値観)
  誠実であり続ける:日々の活動において、人や地球に対する責任を自覚し、
          つねに誠実な心で行動する。
  変革への情熱を抱く:世界をよりよく変えていく熱い情熱を持ち、そのために
          必要な変化を自ら起こす。
  未来を思い描く:社会に与える価値や意義を考え、次の、さらにその先の
          世代のことまで見据える。
  ともに生み出す:互いに協力し合い、信頼されるパートナーとしてともに
          成長し、新しい未来を創る。

日産自動車ミッションとDNA
  ミッション:私たち日産は信頼される企業として、独自性に溢れ、革新的なクルマや
        サービスを創造し、その目に見える価値を、すべてのステークホルダー
        に提供します。
  DNA:他のやらぬことを、やる。創業以来の精神のもと、革新的な技術や、商品を
     生み出すことに情熱を注ぎ挑戦を続けています。

ホンダ運営方針
  ・常に夢と若さを保つこと。
  ・倫理とアイディアと時間を尊重すること。
  ・仕事を愛しコミュニケーションを大切にすること。
  ・調和のとれた仕事の流れをつくり上げること。
  ・不断の研究と努力を忘れないこと。

スズキグループ社是
  一、お客様の立場になって価値ある製品を作ろう
  二、協力一致清新な会社を建設しよう
  三、自己の向上につとめ常に意欲的に前進しよう

三菱グループ3綱領
  所期奉公=期するところは社会への貢献:事業を通じ、物心共に豊かな社会の実現に
       努力すると同時に、かけがえのない地球環境の維持にも貢献する。
  処事光明=フェアープレイに徹する:公明正大で品格のある行動を旨とし、
       活動の公開性、透明性を堅持する。
  立業貿易=グローバルな視野で:全世界的、宇宙的視野に立脚した事業展開を図る。

このように、会社の理念や綱領は類似しています。それはそうですよね、モノを作って売るために必要となる理念は似てくるはずです。もちろん、一つ一つの理念の意味は私なんかが語れるものではありませんが。。。では、なぜ品質問題事故が起こるのか? それは製品やサービスは人間が作るものだからに他なりません。会社に所属しているだけで、全員が会社の理念を体現できるとは思いませんよね。そう、良い品質の製品やサービスを世の中に送り出すことができるか否かは、関与する人間次第です。表現を変えれば、会社が従業員に信頼されるか否かで、品質が決まってしまうことです。品質問題や事故の背景に人が関与していることは、今更説明するまでもありません。人が関与して品質問題や事故が発生するというのは、妙に会社への帰属意識が強い日本人の悪い側面かもしれません。であれば、" 自分の存在も行動も、責任は自分でもつ" ことが重要。あるいは他国のように、頑なに自分の作業のみに徹するか。すなわち、機械になりきれるか。日本人であれば自分の子供を送り出すような気持ちを持って、モノ作りに携わることができれば、品質問題も少なくなると思うんですけどね。従業員教育の前に、会社自身、姿勢を振り返ることが大切だと思います。