H3ロケット打上げ成功!

昨日(7月1日)、H3ロケット3号機が無事打上げられましたね。予定通り、だいち4号は軌道投入されました。ドキドキしながら打上げを見守っていた皆さん、H3も段々と安心して見守ることができるようになってきましたね。まずは一安心、関係者の方々もお疲れ様でした。今回打上げただいち4号(レーダ衛星)は、今までよりもはるかに広い範囲(従来の4倍の観測幅)を観測できる代物で、災害予測、解析、船の航行安全など、地上にもたらす恩恵は小さくありません。それもこれも、H3ロケットの高信頼性があってのことです。関係者のご苦労に頭が下がります。

そうそう、昨年打上げたH3ロケット試験機の(初号機)2段エンジンが着火せず、指令破壊に至った件。そういえば、この教訓を3号機にどう反映したのか興味があり、確認してみました。それで、「H3ロケット試験機1号機打上げ失敗の原因究明に係る調査・安全小委員会報告書」なるもの公開されていたので、覗いてみました。

昨年1号機が2段エンジンに点火信号が送られなかった原因は、過電流を検出したためなんですが、そこに至ったシナリオ(直接的原因)は、大きく分けて3つ。すなわち①通電後の発熱に伴うエキサイタ(点火装置?)内部での短絡、②エキサイタ内部での過電流発生、③PSC2A(2段推進系コントローラ)内部での過電流、および並列冗長を確保するために設けられたPSC2B系への波及 といったところでしょうか。このうち(実際にはFTAにより想定される原因はさらに細分化されていますが)どれが主原因なのか、決定的なシナリオは不明みたいです。テレメトリーで得られたデータに限りがあるので、原因を絞り込むのが難しいみたいですね。

ただ、再現試験の結果から、原因としては否定できないとの結論で、考えられる原因全てに手を打ち、今回の打ち上げにも反映されているようです。国家プロジェクトの一つなので、淡々とスマートに対応していたと思いきや、なかなかに泥臭い対応を余儀なくされたようで、こんなことを言っては失礼ですが、FTAによる要因抽出、絞り込みから、不具合に至った背景のなぜなぜ分析・・・、ついつい頭を抱えていた頃の自分を思い出してしまいました。いまだこの分野で正攻法はないということなんでしょうね。

さて本題からはずれるのですが、上記対応でも話題(?)になっている推進系の2段冗長系システムですが、打上げ域内の安全性を考慮して2段冗長系システムの一方が異常を検知し機能を遮断したら、もう一方も間髪入れず(念押しで?)機能遮断信号を生成するようです。中途半端にミッションを継続させることなく、確実に終了させるという意図のようです。報告書によると、冗長ロジックの見直しは図られたようですが、ミッション継続の可能性を瞬時に見極め、ぜひ生き残りに導く冗長システムを確立してもらいたいものです。

H3ロケット3号機の打上げを喜びつつ、ロバスト設計の大切さを、再認識させられました。