J-PARCで衝撃を受ける

実は20年以上東海村に住んでいますが、初めて原研(日本原子力研究開発機構発機構)の中に入りました。なんなら自宅から歩いてでも行ける距離だし、住民向けの見学会で訪れる機会はあるので、いつかは行けるだろうと思っていましたが。。。そう、ずっと行けずじまいでした。今回機械学会の主催でJ-PARC(高強度陽子加速器施設)の見学会があったので、参加することにしました。一般の見学会で参加するよりも、詳しい説明が聞けるかと思い参加したのですが、実際は一般向けの説明だったので差はなかった印象です。

正門を抜け、受付を済ませて中に入ると、大きな建物がいっぱい。大学のキャンパスか、別の街が現れたような感じです。しばらく敷地内を車で移動すると、数百mもある建物の横を通りJ-PARCのメイン施設MLF(物質生命科学実験施設)に到着。初めに概要説明を受けます。" KじゃなくてCですからね " という掴みから始まり、世界的にも最先端の研究が行われているという趣旨の説明に、ワクワク感が高まります。

ここの加速器は3つの施設に分かれています。最初は負水素イオンビームを加速するリニアック(直線型加速器)という設備。直線の加速器で、長さが330mもあります。先ほど見た数百mの建物はリニアック関連の建物だったようです。次は負水素イオンから陽子を取り出し光速の97%まで加速するRCS(3GeVシンクロトロン、周回型加速器)という設備。最後は、陽子を高速の99.95%まで加速するMR(30GeV主リング、周回型加速器)という設備。これは原子核実験のために使う設備で、直径500mほどにもなる日本最大の加速器だそうです。

見学は概要説明を受けたMFLから始まります。ここは、RCSで加速した陽子を炭素、水銀のターゲットに衝突させてミューオン、中性子のビームを生成する施設。X線との比較で、水飛沫の挙動を観察することができました。写真は説明者の方が一生懸命に説明してくれた水銀ターゲットです。確かに大変な装置であることは見た目でも理解できますが、理解不足からか、いまいち凄さが伝わってきませんでした。ごめんなさい。

通常、X線が非破壊検査には使われますが、デモで見せてくれたように中性子を使うと水や水素などの挙動も観察可能。なので、物質や生化学分野、すなわち新材料開発や創薬に使われているみたいです。ここで取り出したミューオン、中性子ビームが核実験設備に送られ、さまざまな実験に用いられています。とにかく、ここはスケールの大きさに感動しました。国や自治体、大学などの設備が放射状に並ぶ様は圧巻です。

次はニュートリノ実験設備に案内されました。ここは、有名なTtoK(Tokai to Kamioka)実験を行なっている施設。ここで人工的に作り出したニュートリノを岐阜県の神岡町にある検出器、スーパーカミオカンデまで飛ばしています。作り出しているニュートリノの量は日本一だそうで、芋だけじゃなく、ニュートリノも東海村の名産品だと説明者は強調していました。なるほど、そうなんですね、村民として心に刻んでおきます。

でも、ニュートリノを神岡町まで飛ばして何をしているのか疑問ですよね。今回、説明を聞いてちょっとは理解できました。飛ばしている間に変化するニュートリノがあって、それを観測することで反物質が存在しないことの理由を解明するんですね。" CP非対称性の破れ " というらしいのですが、解明できればノーベル賞間違いなし。それよりも、我々がどこからきたのか、我々の存在の意味がわかるかもしれないという、とてつもなくスケールの大きな偉業がなされようとしているんですね。この片田舎、東海村で。それにしても、この実験施設の大きさにも驚きます。地下数十mの竪穴の底に何やら設備が確認できますが、これは飛んでいくニュートリノを事前に確認する検出器だそうです。

最後に訪れたのが、ハドロン実験施設というところ。各種スペクトロメーターで原子核の崩壊を観察する設備があります。通常では存在しないストレンジクオークの挙動を解明する設備という説明なのですが、クオーク自体がよく理解できていないので、???という感じ。反物質が消えてしまった理由を解明するための設備ということで、私なんぞが語れないくらいスケールが大きなことをしています。

2時間程度の慌ただしい見学でしたが、線量計を配布されたり、施設内は放射線を遮蔽する巨大なブロックが至る所に積み上がっていたり、ちょっと不安を覚えながらの見学でした。まあ、放射線は目に見えませんからね、怖いです。でも、各実験テーマのスケールの大きさもさることながら、施設、設備、実験機器の素晴らしさ、凄さに驚きを覚えました。聞けば、研究者自らが装置も設計しているとのこと。こんなすごいものを設計して、多分試作を重ねて、検証して、大変な労力だろうと推測できます。こんなことをしていて研究に支障をきたさないのですかね?妙なところが気になりました。きっと、設計をサポートする部隊がいるのですよね。そうでなければ、研究者の時間がもったいないです。私がサポートできることがあれば、喜んでさせてもらうんですけどね。

いずれにしても、我が家の近くにこんな凄いものが存在し、凄いことをしているとは知りませんでした。今回は、日本の研究者の凄さに感銘を受けながら帰途につきました。J-PARCの皆さん、これからも応援していきますね。

今回は、興奮のあまり長文になってしまいました。すみません。  ではまた。。。